「橋」
kuni72
「魔王さま 私の子 一之進は狼の姿かたちのまま生まれてきました
武士の子なのに 不憫なのです これは如何したことなのですか」
「それは汝の心の翳が 我が子に現れているのだ もし 元の姿を
望むなら そなたの 人の世の命と引き換えに 叶えてやってもよい
ただし 本当に望んでいるか否か 試す このことを我が子に話し
元服の年の誕生日に そなたの屋敷の裏山に架かる つり橋を
渡りなさい 一之進がそなたを呼びとめても 決して振り向いては
ならぬ よもや 引き返すなど 言語道断 さもなくば 綱は切れ
橋と一緒に汝の望みは 粉々に砕け散るのだ それでも 望むのか」
「はい」
こうして その時が やって来た
厳かな元服の儀式が終わり宴たけなわのころ 忽然と母の姿がきえた
一部始終を知っている一之進は 操られるように つり橋へと急ぐ
己の命と引き換えに 我が子の元のからだを欲さんと 向こう岸に
這ってでも渡ろうとしている 懸命の母の姿
「母上っ! 渡ってはなりませぬ母上! お戻り下さい母上っ!」
ようやく追いつき 母のからだを抱きかかえた とっ!! その時!!
大地を揺るがす大音響 ドドドドドドドドドド・・・・・・・・・!!!大地震
橋もろとも 両者の姿は尖刃の谷底へ まっしぐら
(作者のつぶやき : ”想定外”を表現したっかたのですが 魔王の力
と大地震の分離が出来ればもっとよく仕上がったのかなと思ってます)